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  • 味噌を仕込むのは寒の水がいい?

    地域によって違う仕込み時期と、かつてあった糀室

    数年ぶりに味噌を仕込んだ。やはり手作りの味噌はスーパーで買ってくるものより格段においしいからだ。昨年、友達がつくっているのをもらって実感して、やはり自分で造らねばと思った次第。

    味噌を仕込む時期は、うちの方では寒(1月末頃)がいいと言われているのだけど、これには地域性があるみたいで、和歌山県の友達は9月に仕込むという。糀も自分の家で付ける(糀をつくることを、つけるという)ため、気温が高くないと糀ができないからで、「冬に仕込む人たちって、何で?」と言っている。けれども、冬に糀をつける人たちはたくさんいる。伝統的には、地域に糀室という共同の糀づくり小屋があったり、あるいは自宅でこたつや暖房を使って、寒い時期につけるのだ。

    共同の糀づくり小屋では3日3晩ぐらい、通常女の人たちが当番で夜も番をする。その夜に何やらいろいろなことが語られるらしい。こういった糀室は、かつてはよくあったようだが、今はほとんどなくなってしまっている。

    私は地域のやり方にもとづき、寒につけようと思っていたのだが、注文した糀が来るのが2月末になってしまったため、仕込んだのは2月末日だった。

    ちなみに、味噌を造ることを、味噌を仕込むといったり、味噌を煮ると言ったりする。

    今年は大豆が不作。味噌用の豆や、青大豆や

    今年はあちこちで大豆が不作だったということで、みんな、1月にはなかなか手に入らなかったらしい。JAでは買えなかったそうだ。それがなぜか2月になると結構出回って、入手できたという。一体どういう流通の仕組みなのか不明である。

    幸いなことに私は、近所で大豆をたくさん作っている80代の女性があって、直接分けてもらった。大豆の相場は、1kg700円、1升1000円である。大体みんなこの値段を言う。しかし、味噌用の大豆はもっと安いことがある。大体味噌用は普通に豆にする豆と違っていて、大豆ではあるが小粒の白い豆で、私はこれが味噌に特化した特殊な豆なのかと思っていたのだけど、煮豆で食べるのに向かなかったり、割れていたりするため安いらしい(という説がある)。

    小粒の大豆って、大豆を品種改良して小さくしたのかと思っていたのだけど、本来大豆の原種の野生豆はうんと小さいので、小さい方が原種に近いと言えるだろう。

    私が分けてもらった豆は青大豆で、ずっと昔から作ってきた品種ということ。皮は薄い緑色で、芽のところが黒っぽいので、白味噌にしたら黒いぽつぽつが目立つだろうけど、気にしない。かなりおいしいはずだからだ。本来煮豆にして食べた方がいいのだが、その方がそれしかつくってないのでそれを使わせてもらう。

    2升頼んだけど、たくさんおまけしてもらって、さらに、甘煮用のインゲン豆もたくさんくれた。豆は最近めちゃくちゃ高いので嬉しくて仕方ない。

    親指と小指ではさんで潰れるまでって本当?

    友達に、「豆を煮るのに5時間かかるぞ」と言われていた。私も過去の経験で、煮るのにすごく時間がかかった記憶があるので、大仕事だと思っていた。しかし、1時間ちょっとで煮えてしまった。

    煮加減として、よく、指ではさんで潰れるまで、と言われる。今回は、糀を頼んだ人にもらった「味噌の作り方」プリントには、「親指と小指ではさんで潰れるまで」と書いてあった。そんな説は初めて聞いたのだが、試しに親指と小指ではさもうとすると、うまく指が動かず、豆がつるっと飛んでしまうのである。みんなそんなに器用なのだろうか。なんとかはさんだものの、力を入れると指がつりそうになる。いずれにしても、大豆を指で挟んで潰れるというのは本当だろうか。大豆の表面はツルっ、カチっとしていて、潰れはしない。潰そうとすると2つに割れて滑って飛んでいく。

    なので、煮豆よりちょっと軟らかくなったぐらいで止めることにした。

    煮た豆はミンサー(ミンチする道具)に入れてハンドルを回すのだが、前回やったとき、豆が詰まってしまって出口からちっとも出て来なくて、すごく苦労したのだ。夜中の3時までかかっても、わずかしかできず、気が遠くなり、結局知り合いの家に行って電動ミンサーを使わせてもらった。今回もまたそれが起こるのではないかと、ただそれだけが不安材料だった。前回より量は少ないものの、下手すると一晩かかるのではないかと恐怖だったが、今回はすんなり出てきてどんどんミンチできた。45分ぐらいである。要は、前回は豆を軟らかく煮過ぎだったのだ。

    ミンサーを使う場合には、豆を煮過ぎない方がいい。これが結論である。ミンチするんだから豆の硬さなんてあまり関係ないと思う。

    豆をどうやって潰すかの問題

    ミンサーで煮た豆をミンチする。なんかモンブランっぽい。

    豆の潰し方としては、ビニール袋の中に入れて踏む、というのがわりとよく聞く方法である。私もやったことがあるが、踏むと、足の下でムニュ~~~っと妙な感触がするものだ。この踏む作業が大好きな人がいるのだが、私は嫌いである。何より、食べ物を踏むという行為が我慢ならない。

    しかしながら、この踏むというやつは、意外にも昔からやっていた方法らしい。今のような潰す道具がなかった頃は、それしかなかったようである。臼でついたり、擂ったりというのではできないらしい。

    私は嫌なので、ミンサーを買った。大型のと小型のがあって、小型の方だ。友人は「30分でできるぞ」と言っていて、信じられなかったが、その通りだった。豆の量は約2升、3kgである。

    白味噌にするときは米糀だけ~農業女性団体から購入

    味噌は、赤味噌、合わせ味噌(田舎味噌)、白味噌があるが、白味噌は米糀だけ(及び塩)を豆と合わせて仕込むものだ。糀はほかに、麦糀や豆糀があり、それをいろいろ合わせることで味噌の種類が決まる。うちの地方は合わせ味噌(米糀と麦糀)ばかりだと思っていたら、昔から白味噌を造っていた人もあると分かった。特に決まりはないらしい。米がたくさんとれるから米糀だけ、という人もある。米糀だけの白味噌は、甘味が強い。

    2種類つくろうかと思ったけど、意気込みが大きすぎるとやらずに終わるという現象が私においてはよく見られるので、1種類で思いとどまった。

    糀は地域の農業女性の団体がつくっているものだけど、その団体は今年でもうやめるそうだ。来年からはJAかなんかで買わなければならない。

    20年ぐらい前だと思うけど、山間地のあちこちに農業女性の団体ができて、加工所を作り、農産物加工品や味噌などを生産販売するウェーブがあった。それがすごく良かったと思うのだけど、どこも高齢化していて、作る人がなくなったり、さらには農産物自体を作る人もなくなって、苦慮しているようだ。うちの地域でも、続けることができなくなったということだ。

    なんということはなく、うっすら責任を感じる。別に私個人のせいではないが……。

    味噌造りに3晩ぐらいかかるのではないかと思ったけれど、意外にも1晩でやり遂げた。早くできないかなと毎日思う。できるのは11月頃だ。しかし、白味噌の場合、もっと早くてよかったような気もする。